Twitter社を買収したイーロン・マスクとは
こんにちは、ソリューションSecの西川です。
10月27日、440億ドル(約6.4兆円)でイーロン・マスク氏によるTwitter社の買収が完了し、11月8日にはNY証券取引所から上場廃止となりました。
このニュースは世界的に注目されているわけですが、彼が何に狙いを持ってこの買収を目論んだか気になったので色々と調べてみました。
そもそもイーロン・マスクとは?
現在はスペースXやテスラの実業家として有名になっていますが、元々のバックボーンは10歳でプログラミングを習得したエンジニアなんです。12歳のときにBlastarという日本で言うスペースインベーダーのような自作のゲームソフトを販売していました。
21歳のころに米国の大学に入学し、25歳で応用物理学を学ぶためにスタンフォード大学の大学院に入りましたが、突然「新聞などのメディア向けにウェブサイトの開発などを支援するソフトウェアを提供する」というアイデアを思いついてわずか2日間で退学しています。当時1995年です。
このとき、将来人類にとって最も重要になるものは「インターネット」「持続可能エネルギー」「複数の惑星での生活」の3つであると考えていたそうです。
勘の良い方は気付かれたと思いますが、この3つは彼のこれまでの歩みを表現する象徴的な要素ですね。
インターネット⇒ITブーム期にWeb決済サービスPaypal(Xドットコム)を設立
持続可能エネルギー⇒EV車メーカーのテスラ社の設立
複数の惑星での生活⇒民間企業として史上初の有人宇宙飛行を成功させたスペースX社の設立
大学時代に考えていた思想をここまで体現できる実行力は驚くべきものです。
今やテスラはトヨタを上回り世界トップの利益率を誇る自動車メーカーとなっており、2022年7~9月期決算ではトヨタの連結純利益は4342億円だったのに対し、テスラは4542億円と、四半期ベースで初めて両社の金額が逆転しています。
トヨタは販売台数ではテスラの8倍近いのに、1台あたりの純利益はテスラが8倍となっていることから、究極的に経営効率が良いことがわかります。それはなぜか?テスラは電気自動車3車種のみをネット直販していることが最大の強みで、生産効率を極限まで上げ、無駄な販売・広告コストをかけていないのです。
とは言え、トヨタなどの大手自動車メーカーが自動車産業の頂点に立ち、1次下請け・2次下請けなどの部品メーカーに仕事を与えるピラミッド構造は長年にわたり多くの雇用を生み、日本の経済を支えてきたことも事実ですので企業価値を利益率だけで単純比較するのはあまりよくないかもしれませんが。
Twitter買収の狙いは?
なぜ買収したのか、これは色々な記事を読んだ私なりの見解ですがTwitterが「割安の時価総額」にもかかわらずに「圧倒的な影響力」を持つからです。
GAFAMから時価総額の一例をあげると、Facebook(Meta)社は2500億ドル、Amazonは9000億ドル、Appleは2兆ドルを超えます。
これに対してTwitterは440億ドルでの買収ですから、安く感じますね。(一般庶民には意味のわからない桁ですが)
ではなぜ時価総額が低いのか?
巨大IT企業の主要なビジネスモデルの1つに広告収益があり、Twitterのメイン収益もそれが該当します。
Google、Amazon、Facebookがネット広告市場の60%を占めると言われる中で、Twitterのシェアは1%です。Twitterユーザーの方はわかると思いますが、最大140文字という短いテキストだけで勝負しているTwitterのタイムラインというのものは流れていく速度が早く、広告が消費者の目に留まる時間というのは他と比べて圧倒的に短いんです。
このような理由から広告の取りづらいメディアとして、収益性に課題があると言われていました。
ではなぜ儲からない企業を買収したのでしょうか?
世論を操作できるほどの圧倒的な影響力があるからです。
ネット上の誹謗中傷や差別発言、デマなどは国家による規制が厳しくなりつつあり、適切に規制される分には良いですが、その反動として言論の自由が抑えつけられるという側面もあります。
過去にトランプ元大統領がTwitterを有効活用して大統領選挙を勝ち取り、一部の支持者がアメリカ議会を襲撃した事件がありましたが、これがTwitterによって先導されていたとみなされ彼のアカウントは強制停止させられました。
このようにTwitterは世論を動かす力があり、国の仕組みをも変えてしまう力があるということです。
上記のような理由から言論の自由を買収の目的に掲げ、他の巨大IT企業の中でもコスパの良い圧倒的な影響力を手に入れたということになります。
買収後、早速取締役の全員と従業員の約50%を解雇したり、一部のアルゴリズムを変更するなど変革を進めているようですので、経営状態がどう改善していくのか、またTwitterユーザーとしてどのような仕様変更がされるのか、しばらく注目したいと思います。